2012年1月22日日曜日

雨や雪に含まれる天然放射性物質


雨や雪が降った時の一時的な空間線量の増加は殆どの場合大気中に含まれるラドンという気体の天然放射性物質(ラドン温泉のラドンです)と、それが崩壊した短寿命の娘核種(鉛やビスマス等の放射性同位体)が雨粒や雪に絡め取られてまとまって地表に落ちて来るのが原因です。ラドンは通常空気1立方メートルあたり数ベクレル~数十ベクレル程度存在することが多く、屋外より屋内の濃度が高くなります。

このうち鉛とビスマスの同位体が崩壊時にγ線を放出し、降雨時の空間線量増加の原因になっています。雨水中のラドンは本来気体ですから雨が上がって地表が乾くと共に再び拡散し、薄められます。鉛とビスマスは共に半減期が数十分と短いので数時間も経過するとほとんど減衰してしまいます。γ線の放出源が減ってしまうので雨が上がると空間線量は元に戻ります。

昨年3月21日に雨と共に上昇した東京の空間線量は雨が上がっても元には戻りませんでした。雨水中に福島第一原発から放出された大量の放射性物質が含まれていたのです。このうちセシウム134、セシウム137が現在も環境中に大量に残留しているのは周知の通り。

つまり、雨が上がって上昇した線量が元に戻ればOK、戻らなかったらアウトということです。昨年夏にそのことをFacebookにポストしてました。Facebookアカウントお持ちの方はご覧下さい。 http://on.fb.me/xcPmo7

雨や雪と共に上昇した空間線量の原因がヨウ素やセシウムなのか?それとも鉛やビスマス等の天然核種なのか?これを迅速に見極めるには雨水をゲルマニウム半導体検出器で測定するしかありません(セキュリティ東京さんありがとう http://bit.ly/xjfMUf )。線量計はもちろん食品測定器のようなシンチレーションスペクトルメータでも分かりません。測定器の限界なのでどうしようもないのです。

雨水や雪を溶かした水を煮沸して溶存するラドンを取り除き、それから数時間以上密栓放置して鉛やビスマスなどの短寿命核種の減衰を待ってからシンチレーションスペクトルメータで長時間測定すればゲルマニウム半導体検出器が無くても放射性セシウムの有無はわかります。でもそんなに悠長に待っていられないですよね。

ここで雨や雪に含まれる天然放射性核種の影響について考えてみます。

まずラドン、これは地中やコンクリート、石材等から滲み出してきたものが空気中に含まれています。ですから屋外より屋内のほうが濃度が高くなります。高濃度のラドンに長期間にわたって被曝し続けた場合肺がんの原因になる可能性があることはWHOも警告しています。[屋内ラドンの危険性(Wikipedia)] 但し、これは屋内の高濃度ラドンを吸入被曝した場合です。雨や雪に含まれるラドンを呼吸から摂取してしまう可能性は少ないのでこれはあまり心配しなくてもOKだと思います。屋内のラドンによる被曝を減らすにはきちんと換気すればOK。

次に鉛やビスマス等のラドンの崩壊娘核種、これらはγ線を放出しますが、半減期が短く短時間の被曝となるので外部被曝としては影響は小さいと思います。内部被曝も雨や雪に含まれるものを呼吸から摂取するのを避ければOKです。雨や雪を吸入摂取することは量的にはかなり少ないでしょう(雨や雪を大量に吸入したら溺れます^^;)。飲食による被曝は吸入に比べて影響が極めて小さいと言われています。放射能抜きに考えても雨水や雪をそのまま飲食するのは衛生上あまりオススメできません。煮沸消毒すればラドンも除けます。そして鉛やビスマス等の短寿命核種が減衰してしまえば放射能としても大幅に減ってしまいます。

しかしながら、前述したように雨水に含まれるのが天然放射性核種なのか、それともヨウ素131や放射性セシウムなのかはなかなかわかりにくいことなので、直接雨に当たるのはなるべく避ける、濡れた雨具は濡れたまま居室内に持ち込まないといった用心は普段の備えとして大切なのかもしれません。

                                                           副代表(技術担当)という肩書きがついてしまった(M)

0 件のコメント:

コメントを投稿